二児の親になった。予定より一週間早かった。
病院についてからとりあえず分娩室まで妻に付き添い、荷物を取りに一度車に戻って駐車上に車を入れなおし、受付で書類をいろいろサインしていると、受付に電話がかかってきて、もう生まれそうだから早くあがって来いと言われた。麻酔を打とうと麻酔医が準備しているところで、赤ん坊が下がってきたので、助手の女性が「Call, Dr.XXX, the baby is coming!!!」みたいなことを叫びながら廊下を走って先生を呼びにいった。そしてまもなく息子が生まれた。病院についてからわずか30分。大きな赤ん坊だった。先生も助手の人たちも安堵の表情。名前は「Speed」にすればなどと冗談を言われる。それだけ緊迫していたと言うことなのだろう。こっちも「I will make sure you are not charging me for epidural(麻酔代を請求されないように確認するよ)」「早く終わったので、ディスカウントしてくれないか」などと冗談を言い返す。この冗談アメリカ的だなと思う。
母子ともに健康である。元気に生まれてきてくれた息子と、がばった妻に感謝。
一昨日から義母が来ている。男の家事、子育てなんて、これまで一所懸命やってきたつもりだけど、義母の前ではかなわない。あっというまにやることがなくなってしまった。今週は仕事ものんびりなので、昨日も今日もテレビに釘付け。
昨日の早朝からみた日本・韓国戦は、投手戦で力の入るものだった。朝5:30からテレビを見ていた(しかも前日からデイライト・セイビングが始まったため時計の針が一時間進んで、体感的には朝4:30)。メジャーリーグでやっているイチローや松坂以外は、日本のプレーヤーの試合を生でみるなんて久しぶりなので、おもしろかった。前回のWBCもアメリカにいて日本の試合はほぼ全部見た。今回も躍進して欲しいものである。
アメリカとカナダの試合も途中まではカナダがリードしていたしして、面白かった。ペデロイアとジーターの二遊間なんて、オールスター戦でしか見られないまさに夢の競演。見ていてわくわくする。でも、アメリカ人はWBCにはほとんど興味ない。会社で話を振ってみても知っている人はまずいない。一方で中国人の同僚などからは、「韓国戦勝利おめでとう」などと唐突に言われる。 アメリカ人にとっては、メジャーのオープン戦程度の感覚である。
しかし、なんといっても大会でこれまでの最大の話題は、オランダチームの大活躍。初戦でドミニカ共和国という、アメリカと並んで優勝候補とすら言われるチームから大金星を挙げたときは、エラーがらみだったのでまぐれだろうと思った。ところが、昨日の第二戦では、それなりに戦力も整っているプエルトリコ相手に8回までゼロ対ゼロと大健闘した末に惜敗。
そして、たった今終わった第三戦、ドミニカ共和国との二次リーグ進出をかけた再選では、なんと延長10回ゼロ対ゼロの大健闘。11回の表にエラーがらみでドミニカに1点取られ、ついに力尽きたか、夢もここまでかと思ったが、その裏になんとサヨナラ逆転勝ちしてしまった。アメリカほどではないにしても、ドミニカ共和国の面々もすごい。デービッド・オーティスや、ペドロ・マルティネスや、ミゲール・テハダや、ロビンソン・カノや、それこそオールスター級。そこにメージャーリーガー経験者なんてほとんどいない、まったくだれも知らないオランダ代表の面々が大健闘して、しかも勝ったんだから、見ているほうも大興奮。
「失うものは何もない」と言う感じでオランダの選手がのびのびやっている一方で、試合終盤になると、メジャーリーガー軍団(ドミニカ)の方が「絶対勝たなきゃいけない、俺たちが予選リーグ敗退なんてありえない」てな感じでどんどん力は入っていくのがわかった。最後のドミニカの逆点劇も、リリーフピッチャーの牽制悪送球がきっかけ(そのピッチャーも去年はメジャーで69試合も投げている)。
野球って面白い。この時期の、フロリダでメジャーリーガーが動き出すニュースが伝えられ、春の訪れをまつような感覚が好きである。今年はWBCもあり、新しい日本人もMLBにくるので楽しみである。二人目が生まれたら、家でビールを飲みながら子育てする時間も増えるのだろうから、きっと。
明日は一次リーグの一位決定戦で、オランダは今度はプエルトリコと再選らしい。神がかったような勢いがあるオランダは明日もきっとやってくれるだろう。連戦で大変だろうけどがんばれ!
今週末は、アメリカに来て以来、随分とお世話になっているTom & Sloane夫妻の家に遊びにいく。車で1・5時間くらい、コネチカットの山の中にある大きな家。トムは元々はクリケットクラブのチームメートであるが、時々週末一泊で遊びにいっては、新鮮な空気をすって、自転車のったりハイキングをしたり、美味しいものをご馳走になったりしてリフレッシュさせてもらっていた。大手投資銀行に勤めるトムは昨今の金融危機の中で、I bankにいてもしょうがないと思い立ち、ドイツでまったく違ったフィールドに転職するらしい。彼の勇気ある決断を尊敬する。彼らがいない間この巣晴らしログハウスを彼らから借りてここに住もうかと結構まじめに考えたが、1.5時間の通勤時間と、運転ができないと何もできない生活(妻が運転できない)ことを考えると実現はできなかった。彼らにとって待ちに待った第二子妊娠の嬉しい知らせも同時にきいた。しかもなんと二人目の子にはには三人目もついてくるということ(つまり双子!)。これから大変だろうけど、新天地で新しい家族とがんばって欲しいな。しかし双子かー。すごいな。
うちの娘はだいぶ声を発するようになってきている。英語と日本語の両方が耳に入る環境にいるせいか、大人が話す「言葉」にはなっていないが、「ビービービー」とか「ambii, oxoxoxottyyyy...」「peeyaa, brokeedddeddaaaa」みたいに、随分長く発声をするようになってきている。多分彼女なりに意味のあることを発言しているのだろうけど、僕らには残念ながら分からない。分かる言葉といえば、抱っこして欲しい時にいう「up」くらい。もう20ヶ月なので、もう少し語彙が増えなくてはいけない時期だけど、別に心配はしていない。僕と妻の子だからおとなしい子であるはずはない。いろいろな音を発しているので、ある日突然、それが言葉になり、あふれ出るように言葉をしゃべるはじめるような気がする。
最近妻のWork from homeしているときに妻のママ友達と会う機会が何度かあった。子育ての話を中心にいろいろな話をしていて楽しそう(実際はいろいろ大変なのはもちろんわかっているが)。先週の土曜日の夜、フォレストヒルズ近辺の日本人ママ十数名が集まり、子供抜きで飲み会をやっていた。Mixiでそういうコミュニティーを作ってどんどん人が増えていっているらしい。その日の夕方僕はクリケットの練習に行っていたのだが、帰りに渋滞にはまり、妻が家を出る時間までに帰宅できなかった。仕方なく妻にはとりあえず娘を連れて飲み会までいってもらい、会場の日本食レストランで娘を僕がピックアップした。せっかく子供なし旦那なしで羽根を伸ばしているママたちがいるところに参上するのはすこし気が引けた。十数名のママを一同に会して宴会をしているのは、圧倒されるものがあった(そしてその裏には子供と悪戦苦闘している父親が同じ数だけいるかと思うとおかしい)。普段子育てでストレスがたまっているママたちだからどんどんゆっくりしてほしい。その日がはじめて子供と二人きりですごすパパなんかもいたらしく、パパからこどもの扱いかたに関する問い合わせ電話も結構会の途中ではかかってきたらしい。もともと2時間くらいといっていたのが結局4-5時間になったのももちろんまったく問題ない。こういうような楽しみ方をもっとしてくれれば良いと思うのは、夫の勝手な都合なんだろう。
来週には義母がやってくる。二人目誕生もいよいよ秒読みに入ってきた。だんだん一人目の時の記憶がよみがえってきた。同じように出産を控えている日本の友人たちはどうしているのかが気になる。
プロジェクトが一段落した。昨日は久しぶりに同僚の日本人たちと飲みに行った。今日は妻の検診があるので、午前中家で子供の世話をして、午後から事務所に行こうと思っていたが、よく考えたら家でもこなせることがほとんどなので、「Work from home」した。
午前中メールや電話をすこしして、妻が出かけてから、昼に子供にお昼をやる。同僚から携帯に電話がある。
"Where are you today?"
"I am feeding my daughter now. What's up?".
"Oh sorry, I can call you back later"
"No, no worries. We can chat now"
見たいな感じで会話が大体始まる。家にいることは正直に話してしまった方が良い。みな気を使ってくれる。さすがにクライアントからの電話には家にいることは言わず「いま外出中ですが」と断る。
娘を急いで昼寝させ、1時からテレコンをいくつかこなす。娘はぐっすり寝ている。完璧。こんな日に限って電話・メールやフォローアップ事項が多い。でも適当にこなしていく。テレコンには自分が中心的に進める場合と、単に聞いているだけの場合があるが、今日のは聞いている方が多かったので楽であった。テレコンの途中で娘がおきて泣き出す。ミュートして、ヘッドホンでテレコンを聞きながら今度は一緒に布団に入り本格的に寝付かせる。10分やったらくらいでねた。電話会議中の電話の向こうにいる連中はまさかぼくが娘と布団に入っているなんて思わないだろう。
妻は検診のあと、マンハッタンで少し買い物をしたり、自分の時間をすごしてしてから、満足そうに夕方返ってきた。夕方ジョギングに行こうと思ったが寒すぎたのでやめた。ジョギングもできたら、ほぼ完璧な一日だった。こういう感じでフレキシブルに仕事ができるのは、アメリカにいて良い点である。
夜またクライアントとテレコンがいくつか入った。今度は正直に家にいることを話す。後ろで娘が叫んだりするが、こっちのクライアントは(たとえ日系企業でも)別にそんなことは問題にならない。この点は楽である。
「明日は会社に行くのかと」と妻に聞かれる。そんなこと聞くなよ、当たり前だよと答えそうになるが、はて、そう考えると別に明日も行く必要はないかも知れない。
大きなプロジェクトが大詰めを迎えてきている。ある日本企業がアメリカ企業を買収するというものが、その買収スキームが複雑で、数ヶ月前にこの話を聞いた時には、正直何でこんなに複雑なことするんだろうかと思った。僕らは各国のチームをまじえて税務・会計面からお手伝いはするが、スキームの大枠はもうすでに決まっておりその部分について変えることはできない。以前にも書いたが、M&Aは相手との交渉があってするもので、関係者それぞれ思惑があり、会社も人間もみな生き物であるため考え方も時間とともに変わっていく。そういう各人の思惑が複雑に絡まりあってものが進んでいる場合(というか進んでいないけど)一会計事務所がアドバイザーとしてできることは少ない場合があり、今回はその典型であった。
日本企業の意思決定プロセスは、日本特有でアメリカ人には理解ができない。日系案件をよく一緒にやるアメリカ人上司も、今だにわからないという。僕はそれなりにわかっていたつもりであったが、今回はまだまだ理解が足りないことを再認識されられた。クライアントとのやり取りのなかで「Ringi」という言葉が何度も出てくるので、同僚のイギリス人はインターネットで調べて驚いていた。「Keiretsu」や「 Kanban」などの日本式の経営システムの言葉と並んでこの「Ringi」という言葉も英語になりつつあることをはじめて知った。「Kanban」が日本が世界に誇るすばらしいシステムだとすると、「Ringi」は「Keiretsu」と並んでどちら方というとネガティブなシステムだという見方がされているようである。アメリカ人からみれば、この日本独特のシステムは理屈ではわかっていても、最終の機関決定が一ヵ月後なのに、我々のレポートを今週中に出せといわれると、「何でそんなに早く必要なんだ」ということになってしまう。
この日本の稟議書という仕組みは、確かに根回しに時間がかかり、意思決定プロセスを遅くさせるものである。多くの中間管理職関係者が承認していくために、本来は「みなで意思決定をして責任をとる」のが目的だったのが、実は「誰も責任をとらない」ことになる場合がある。一方で、いろいろな視点をもった関係者が多くの疑問・質問を各段階であげてくるために(そしてそういった質問のなかには、何でこんなことも知らないのかと首をかしげるようなものも多いが)、問題が洗いざらいにされ、素人でも、世間一般の人でも誰もが納得できるような意思決定になるという良い面ももちろんある。簡単に言えば、スピードはないが正しい意思決定ができるシステムのはずである。しかし実際はそうではないことも多い。
例えば、昨今の円高、資産価値の下落、米国企業の経営不振という中で、米国の企業価値は相対的に下がっており、日本企業にとってはM&Aのチャンスであるはずであるが、実際は稟議・機関決定プロセスの中で、「今はとりあえず様子を見るべきでは」というようなことを「なんとなく」疑問にする人が必ずいて、その結果このチャンスを逃していることになっているのではないかと思う。メディア等のインタビューでは「積極的にM&Aを行っていく」みたいなことを口にする経営者は多いが、多分それは株主へのアピールでしかないんだろうと思う。あるいは、「前例がないからやめよう」みたいな声も必ずあがってくるはずである。そうしてリスクをとらないような経営になっていく。
反対に、この投資案件はなんとなくおかしいけど、「他の人が稟議書にサインしているから大丈夫だろうたぶん」という感じで、経済的に意味のない買収や、変なスキームが承認されてしまうこともよくあると思う。
ここ数週間12時を回ってから帰ることがほとんどだったが、今週末は休めそうである。家族には迷惑がかかっているが、こんな時勢に仕事があるのは幸せなことである。意思決定が遅い日本企業のおかげで僕らは仕事が増えるという部分も実はある。
明日はスーパーボール。ハーフタイムショウには、僕の大好きなBruce Springsteenが登場するから見逃せない。どの曲を歌うんだろう。数年前にPaul McCartneyが登場したときはやっぱりビートルズ時代の曲を中心に歌っていた。ブルースはきっと昔の曲を中心に歌うようなことはしないだろうと思うけど、70-80年代の名曲も歌ってくれないかという期待も少しある。楽しみである。