WBCの決勝、日本対韓国戦を見ながらこれを書いている。ここまでのアメリカでの論調は、「アジアの二チーム(日韓)は、十分な準備をしてきて、正確な野球、いわゆる「スモールボール」をやり、こつこつと勝利を重ねよく戦っている。アメリカはこの大会は本気でやっていないから、負けてもしょうがない。でも世界一の野球大国はやっぱりアメリカさ」的なものである。昨日のアメリカ戦で、負けたアメリカの監督と選手のコメントもそのようなものだった。すこし紹介する。
アメリカチームの監督で巨人でプレーした経験もあるDavey Johnsonは、日本の野球はこれでアメリカを越えたかと問われて、
"No, I think we had quality players, It's just one ballgame. You know, some of our pitchers aren't as far along as the Japanese pitchers. I think that's the second time that I've been beaten by a Japanese team, managing a U.S. team. And I've probably played about 10 games against Japanese teams. But I have to hand it to them. They have a very good team."
(超適当意訳だけど)「いや、うちのプレーヤーもよかった。たった1試合負けただけじゃないか。過去私が監督した日本戦10試合のうち、負けはまだ2試合めだ。うちのピッチャーはシーズンのこの段階では、実力がでていない。でも日本はよく戦った」。
先頭打者でいきなり松坂からホームランを打ったBrian Roberts曰く、
"They're going to do the little things, and you're going to have to go out there and beat them. As Americans, we probably don't do that at times. I think people look at the money and their contracts and what pays in the States may not pay when you watch them play"
(また超適当意訳)「日本は細かいプレーを正確にやってくる。それにはかなわない。アメリカでは、そういうちまちましたプレーはファンには受け入れられない(そこまでして勝ちたくないというニュアンスも)」
短打や四球で出塁し、送りバントやヒットエンドランで確実につなぎ、犠牲フライや連打で確実に点を入れる。相手のエラーにつけこみ、さらに点を重ねる。そして日本のエラーは少ない。昨日は僕もアメリカに勝ったうれしさもあり、「うーん、これぞ日本野球の醍醐味」などと思って楽しんでいた。上のようなアメリカのコメントも負け惜しみくらいにしか思っていなかった。
ところが、今日こうして日韓の決勝戦をみているうちに少し気持ちが変わってきた。日韓両チームの野球はどうもつまらないのである。打線は確実につなぐ。打者は粘る。四球をよく選ぶ。送りバントや犠牲フライを多用する。ピッチャーはコントロールがよく、変化球が多い。守備は確実でエラーはすくない。なんか高校野球をみているような気分になってきた。
僕自身、アメリカに来て5年を越え、日本チームの野球をじっくり見るのは久しぶりというのもある(日本チームには知らない選手がおおい)。こっちでメジャーリーグをテレビ中継をたっぷり見ているし、年に数回は球場にも行っているせいもある。でも、Entertainmentと言う意味では、アジアの野球はアメリカの野球にはかなわないと思った。序盤の3回で、ノーアウト一塁二塁で四番の城島が送りバントを試みたシーンは印象的だった。メジャーでは四番がバントすることなどめったにみない。しかもこんな序盤で。まして、城島は今日から4番に昇格しているのである。昨日Brian Robertsが言っていたのはこういうことだったのか。
たった今終わった7回も象徴的。9番片岡が短打で出塁そして盗塁、続くイチローが送りバントで自分もセーフで一三塁となり、続く2番中島の短打で得点。三番青木の外野フライでイチローがタッチアップで二塁から三塁に進む。しかし韓国もだまっておらず、次の城島のボテボテのサードごろを見事にゲッツーにさばき、守備で魅せる。
たった今試合が終わった。こつこつ重ねた点をまもり日本が優勝した。やっぱり嬉しい。でもメジャーリーグが始まるのがますます楽しみになった。アメリカ人がWBCに興味を持たない理由が解った気がする。だらか僕は日本では昔から巨人ファンだったし、こっちではYankeesが好きなのだろう。